採用試験や社内の選抜試験などで、作文・小論文を書く機会があります。前もって構想を練ったり、リサーチする時間が与えられている場合もありますが、試験会場で制限時間内に書かなければならないケースの場合は、日ごろから文章を書く練習を積んでおく必要があります。作文・小論文は書類選考の上では極めて重要で、いかに自分や自分のアイデアをうまくPRできるかが問われます。
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作文と小論文の違い 何を問われているかを把握する
作文と小論文について、明確に違いを示している場合と、そうでない場合があります。おおまかに言うと、作文は自分の体験や感想などを表現し、小論文は時事問題など世の中の出来事について書くことが多いです。
このため、
作文のテーマは自分の身の回りの出来事になり、小論文は社会問題や時事問題などがテーマになることが多いと言えます。
テーマは何か、何を求められているかを考える
作文や小論文の試験で大事なことは、それらの試験を行う主催者側が、どのようなテーマを立てているのか、また、何を求められているのかをしっかり把握しなければなりません。
与えられた指示を正しく把握することで、先方が求めているテーマに応じて、先方が期待している「かゆいところ」に手が届く文章を書くことが大事です。
また、試験会場で書く場合は、手書きであることが多いと考えられます。与えられた制限時間に、定められた字数制限を守り、読みやすい字で書くことを心がけなければなりません。
作文や小論文では、与えられたテーマ、または自分が設定したテーマに対する自分の意見や考え方を論理的に伝える力が試されます。さらに、自分の体験を表現する時、自分はその体験について誰よりも詳しく知っているでしょうが、読む人は初めてであることを忘れずに、独善的にならないよう、読む人にわかりやすいように注意を払います。
個性が際立つ作文・小論文を書くには
作文・小論文は、自分をアピールする絶好の場です。もちろん、採用試験の場合は、面接の機会もありますが、そこへ進むまでに、作文・小論文の壁をクリアしなければならないケースもあります。
「自分をアピールする=自分をブランディングする」ための作文・小論文を書くために必要な心構えや備えておくべきことは次の通りです。
己を知ること(自己分析)
作文や小論文では、要求されたテーマに基づいて、論理を展開させていきますが、その中で、自分の立場や体験などとテーマとの関係性を書くように求められることが少なくありません。
自分の性格、強みや弱み、将来の夢や希望、どのような人間になりたいか、尊敬する人、価値観、これまでの挫折経験やそれをどのように乗り越えてきたのかなどについて把握し、頭の中でしっかりと整理しておくと心強いです。
世間を知ること(時事問題への関心)
世の中で何が起こっているのかを頭の中に入れ、論点についても理解しておくことが大事です。
地球環境保全、水・食糧不足、エネルギー、宗教、人種、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)などの性的多様性、AI(人工知能)、ロボットなどのテクノロジーの進展などは世界共通の課題です。
また、労働力不足、国家財政の再建、女性の社会進出、高齢者の雇用などは少子高齢化問題を抱える日本が解決しなければならない課題です。
現代社会は高度化、複雑化しています。自分の経験の中だけにとどまらず、さまざまな情報や価値観、考え方に耳を傾ける姿勢が大事です。インターネットで知りたい情報を検索するだけではなく、新聞やテレビのニュースにも、ざっと目を通すことが大切です。
就職したい企業のことを知ること
多くの企業は、経営理念として、または、自社の事業の中で、さまざまな社会課題の解決に目を向けています。自分が書いた作文・小論文を読む企業の取り組みを熟知していれば、テーマに対する論点、自分とのかかわりを捉えた的確な文章を書くことができるはずです。
また、自分が就職したい企業が属する業界についても知っておくと心強いです。就職した企業の業界での立ち位置や、グローバルでの競争関係や協力関係などを描けると、文章の幅が広がります。
正しい日本語を知ること
文章を書くことが苦手だと感じる人も、背伸びして名文を書こうとせず、読む人に伝わる文章を書くように心がけます。それには、正しい日本語を書くことが基本です。正しい句読点の使い方や漢字、現代仮名遣いなどを確認し、「何がどうした」という「主語+述語」を明快にして、論理を展開します。
テーマを的確にとらえるには
作文・小論文の試験会場では、テーマが与えられた場合にいきなり書き始めるのではなく、まずはアウトライン(筋書き)を考えます。紙の上に手書きで書く場合は、思いついたままに書いてしまうと、書きもらしや論理の飛躍、具体例の欠如などが見つかると、書き直すのにかえって手間がかかります。
アウトラインには、テーマに関連する自分の経験を選び、どのような結論を導き出すかを決めます。「結論=ゴール」と、それに続く「論理展開=道順」が決まれば、「書き出し=スタート」をどうするかを考えます。後は、どれくらいの分量を割くのかと、与えられた時間の配分を考えて、書き進めていきます。
作文・小論文で評価されるのは、論理展開力です。与えられたテーマの中で、尖った意見を表現しようとしても、論理に矛盾があったり、飛躍してしまうと、説得力がありません。論理的に整合性のある筋書きをつくることが、説得力のある作文・小論文を書く決め手です。
【アウトライン=筋書き】
テーマに合った経験を探し出す
作文・小論文の独自性を出そうとすると、自分の経験が鍵を握ります。テーマが決まれば、自分の経験の引き出しの中から、どのエピソードを書くのかを選びます。結論を導き出すための具体例として最適であり、しかも、自分の良さをアピールできる経験であればベストです。
制限時間内にまとめなければならないので、こだわりすぎると作業が大きく遅れてしまいます。ベストな経験が見つからなければ、誰にでもある日常の出来事を例に挙げるのも有効な方法です。日常の出来事から、大きな視点を導き出すことができれば良いのです。
派手な体験をでっち上げたり、ウソをついたりしても、高い評価を得られるどころか、墓穴を掘ってしまう恐れもあります。
例えば、「国際協力の大切さ」をテーマに書く場合を考えます。
海外経験が豊富な人は、その中から体験を選ぶことができますが、外国に行ったことがない場合は、日常の体験の中から選びます。
- 海外から日本に訪れている外国人とのかかわり
- 映画やドラマで見た外国人の価値観や考え方
- 国内でのボランティア体験
こうした身近な体験を例に出し、そこで自分が感じたことが、国際協力の大切さというテーマとどのようにかかわっていくかを考えて、筋書きを組み立てればいいのです。
テーマと自分がどのように向き合うのかが重要です。経験から何に気付き、何を学んだのか、そして、それをどう生かしていくのかという問題解決に迫る姿勢をアピールする気持ちが大事です。
まとめ
作文・小論文は書けば書くほどうまくなっていきます。さまざまなテーマを自分で設定して、書く練習をすると効果的です。
自分ではわかりやすく書いているつもりでも、うまく伝わっていない場合もあります。書きあがったら、誰かに読んでもらい、言いたいことが伝わっているかどうか、確かめてみると良いでしょう。
必ずしも、名文や美しい文章を目指す必要はありません。社会問題に関する理解と、それと向き合う姿勢を表現できるよう心掛けることが大切です。