原稿赤入れや書き直しを何度言われても、折れない心

ライターにとって、自分が書いた原稿を書き直すように言われることは辛いことです。自分の考えを否定されたように感じたり、プライドを傷つけられたりして、自信を失ってしまうこともあります。しかし、ライターが原稿の修正や書き直しを依頼されることは日常茶飯事です。修正や書き直しを糧にして、成長に結びつけることが、この道で生き残るためには極めて重要です。

もくじ

「ダメ出し」を成長の糧にするための心得

すでにネームバリューがある有名ライターは、名前で仕事が取れたり、発注者から指名で依頼が来ます。そういう人は、ダメ出しを糧に成長する必要もないかもしれません。しかし、駆け出しのライターが、ライティングの副業や本業で生きていこうとする場合、原稿の修正や書き直しから、何かを学ぶ姿勢が大事になってきます。

ダメ出しを生かすための5箇条
  1. 編集者や依頼主の意見を聞く姿勢を持つこと
  2. 「ダメ出し」は当たり前と思うこと
  3. 「ダメ出しがない=質の高い原稿」ではない
  4. 修正依頼されたら、「なぜか」を考える
  5. 「なぜか」の重要性を判断する

編集者や依頼主の意見を聞く姿勢を持つ

新人ライターや経験の浅い人の場合は特に、原稿の修正や書き直しについて聞く姿勢を持つことです。最初から、「文句は言わせぬ」という姿勢で仕事をすると、よほどの優れたアウトプットの原稿を示さない限り、次から仕事が来なくなってしまう恐れがあります。

最初からすべてを拒絶し、自分の殻にこもるような姿勢を見せてしまうと、依頼主側から疎んじられ、ライターとしての経験を積む機会が少なくなってしまいます。

サッカー選手や野球選手など、数字で結果を示すことがしやすい仕事であれば「ビッグマウス」も効果を発揮しますが、依頼を受けて書くようなライティング業務の場合は、原稿の出来栄えを世間に問う前に、編集者や依頼主のハードルを越えなければなりません。

聞く耳を持たない人は、上達するためのハードルを自分で高くしてしまう

「ダメ出し」は当たり前と思う

原稿をダメ出しされることは、決して気持ちいいことではありません。ライターと編集者の双方の立場を経験してきた視点で言うと、編集者がライターの原稿について意見を表明することは、編集者の仕事であるということです。

これが、記事広告の案件であっても同じです。原稿の依頼主が、ライターの原稿について意見することは、依頼主の仕事です。そして、わざわざ意見を言うときに、「褒める」ということは極めて稀です。逆に、ダメだしすることの方が圧倒的に多いと言えます。

「ダメ出しは当たり前」と思っておけば、気持ちは軽くなります

「ダメ出しがない=質の高い原稿」ではない

このように考えると、編集者や依頼主から、何らかの意見表明があるということは彼らの日常の仕事であり、当たり前であると考えるべきです。「何も意見されなかったから、完成度の高い原稿である」と考えるのは短絡的です。

どちらかと言えば、「意見するべき点も見つからなかった」のか、「編集者や依頼主の仕事が忙しかった」のか、「何らかの事情があって詳しく見ていなかった」などと考えるほうが自然でしょう。

編集者や発注者がある程度満足できるレベルの原稿であった場合はいいのですが、読む人の印象に残らないインパクトのない原稿である場合は、注意が必要です。読者の反応がない時ほど、自らを戒めるぐらいの気持ちの持ち方が求められます。

修正依頼されたら、「なぜか」を考える

「ダメ出しされても当たり前」という心構えができたら、実際に修正依頼や「ダメ出し」をされたときに、「早速来ましたね」というゆったりした気持ちで、その内容を確かめます。

「てにをは」の助詞の使い方や言葉のニュアンスなど、さまざまな修正を依頼されます。その時に大事なのは、修正を依頼した側が「なぜ、そうしてほしいのか」を考えることです。

メディアで経験のある編集者が、さまざまな指摘をする場合は、それなりの理由があるはずです。細かい表現などは、編集者の好みがあるので、ライターがそこでこだわるのは得策ではありません。

自分がこだわった表現がダメ出しされたり、意味があってそう表現したにもかかわらず、意図と違うように書き直すように指示されたときは、十分に話し合うべきです。自分が「なぜ」そう表現したのかを説明し、相手が「なぜ」そう修正するように指示したのかを意味を考えます。

「なぜか」の重要性を判断する

ネットメディアや雑誌の編集部では、互いの意見を交わすコミュニケーションを重ねて、良い原稿をつくっていくという考え方が強いです。新人のライターは、自分の原稿が修正される過程や、なぜ修正されたのかをよく吟味すると上達も早くなります。

一方、記事広告などを依頼された原稿については、相手の修正意図は「大きな意味を持っている」場合と、「大した意味がない」場合に大別されます。前者の「大きな意味」は、「記事広告が狙いとするマーケティング宣伝戦略に、記事の表現が適しているかどうか」です。

記事広告は、依頼主の商品やサービスの良さを知ってもらい、記事を読んだ人に共感してもらうことが狙いです。または、依頼企業のブランドイメージを高める効果を狙うこともあるでしょう。相手の意図と違った表現になっている場合は、良くコミュニケーションを取って、より良い方向に修正することが大事です。

後者の「大した意味がない」場合については、修正を依頼する側がライティングの素人であるために起こります。このケースも、相手側の「なぜ」を理解しようとする努力は必要ですが、そもそも大した意味がないので、修正にお付き合いしておくのも仕事をスムーズに進めるコツです。

修正を少なくできるかは、事前打ち合わせで決まる

ライターとして、修正や書き直しの依頼を少なくするには、原稿を発注する側との事前の打ち合わせが極めて重要になります。その場では、発注側が何を求めているのかをよく聞き、自分の中で原稿としてイメージできるかどうかが大事になります。

もし、発注側の求めていることが、よくイメージできない場合は、その場ですり合わせておかなければなりません。曖昧のままにしておくと、原稿を出稿した後で、必ずと言っていいほど、双方の考え方の違いが出てしまうからです。

とくに、webや紙媒体の記事広告の場合、発注先の考え方をきちんと理解しておく必要があります。記事広告の場合は、何回かやり取りを経て、脱稿になることがほとんどなので、双方の思い違いによる修正が多いと、作業が煩雑になってしまいます。

わからないことをそのままにしておくと、あとが大変

打ち合わせの場では、相手の考え方を自分なりに理解したうえで、「原稿にするとこのような感じになりますか」と、相手のニーズについて抱いたイメージを言葉にして相手側に伝えるのも効果的です。もし、相手側が抱いていたイメージと違っていれば、その場で修正できるからです。

指示が分かりにくい時は、ますはカタチにする

事前の打ち合わせで詰めていても、いざ、原稿ができあがってから、発注側から「イメージと違う」と言われるケースもあります。また、発注側が複数人の部門で原稿の方向性を決める場合は、事前の打ち合わせに出た担当者と、出席しなかった上司の間でイメージを共有できていない場合もあり得ます。

原稿修正の意図がわからなかったり、矛盾していると感じた場合などは、とにかく原稿のカタチにまとめることを第一に作業を進めるのが無難です。原稿が出来上がってからのほうが、具体的にどう修正してほしいかがはっきりするからです。

メディアの編集者はプロなので、自分で原稿を書き直すことも容易であり、原稿のカタチに仕上がっていなくても、どうしてほしいかを指示することが可能です。しかし、プロのライターを経験していない人にとって、原稿の仕上がりをイメージして、「どうしてほしいか」を依頼することはハードルが高いと言えます。

とにかく、早くカタチに仕上げ、荒書きの原稿を土台に、修正点を詰めていくというアプローチのほうが、結果的に時間や手間を短縮できることがあります。

まとめ

ライター稼業をやっている限り、原稿の修正や書き直しの依頼はつきものです。そのたびに、自信を無くすようなことでは、身体がいくつあっても持ちません。

修正箇所が多くなりすぎるのは、発注側とライターとで、原稿のイメージが共有できていないことが原因です。発注側が明確なイメージを抱いている場合は良いのですが、イメージを持っていない場合、出てきた原稿について不満が出てしまいます。

発注者側のイメージがよくわからないときは、まずはコミュニケーションを取って確かめてみることです。それでもわからないときは、発注側がイメージを持てていない可能性が強いので、イメージが湧くような提案をライター側から積極的に行うのも効果的です。