事実に基づく正確な原稿が読者の信頼を得る

インターネット全盛の時代、アクセスを集めることができるコンテンツがもてはやされています。それが大事なことなのですが、正確性に欠いたり、勘違いされるやすい表現があると、大きな誤解を生む原因になってしまいます。信頼されるライターであるためには、正しく、客観的に書く技術を身に付けておくことが重要です。

事実かどうかを判断できる裏付けを示す

フェイクニュースという言葉を聞くことが多くなりました。フェイクとは「偽物」と言う意味です。主にインターネット上で発信され、拡散されるうその記事のことを指します。米国の大統領選で、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通して多くのフェイクニュースが拡散され、投票行動に大きな影響を与えたという指摘がされました。

本当のこととウソが混在するインターネットの世界だからこそ、正しく書くことは重要です。フェイクニュースのように、意図的にウソを書こうとしなくても、正しく書いていない場合に、読者に誤解を与えてしまうケースもあります。

正しく書くための重要なことは、書かれていることが事実なのか、どうなのかという判断を読者ができるための裏付けを示すということです。

ケース1
A 犬用の歯磨きガムは、虫歯予防に効果がある。
B 犬用の歯磨きガムを「〇〇」は、「△△研究所」で歯垢を除去する効果が確認されている。

Aの文章では、世の中にある犬用の歯磨きガムのすべてに、虫歯予防の効果が立証されていると読めてしまいます。しかも、どのような効果があるのか、どのように確かめたのかがわかりません。

一方、Bの文章は、歯磨きガムの種類「〇〇」という具体的な商品名あげて、△△研究所という検査機関で、歯垢を除去する効果が確認されたことを書き示しています。

「歯磨き効果がある」と断定した表現の場合、信頼できる根拠を示しておく

伝聞や主観はそれとわかるように書く

新聞やテレビ、インターネットニュースなどの特ダネの記事では、あえてニュースソース(情報源)を特定せずに書いているケースがあります。この場合は、取材をしていないわけではなく、情報源を守るという意味合いで、秘匿扱いにしているわけです。

一方で、街の情報や行政の政策、事件・事故などを知らせる記事の場合、情報源を記すのが一般的です。行政ニュースなら、「〇〇県は~」、事件・事故の場合は、「△△県警の調べでは~」と言った具合です。

報道記者は、単なる伝聞でニュースの記事はつくりません。それと同じように、プロフェッショナルなライティングでは「噂になっている」とか、「誰かがそう言っていた」などという無責任な文章をつくると、信頼を損ねることになりかねません。

伝聞の場合は、情報源を示して、文章にします。

ケース2
芸能人AさんとアスリートBさんが結婚へ

この場合は、記事を書いた人が、さまざまな情報を総合的に判断して、AさんとBさんが結婚する可能性が高いと判断したのか、またはAさんとBさんが、書いた人にそう語ったのか、もしくは、単なる噂なのかは判断が付きません。

単なる噂の場合は、間違っている可能性があるので、信頼性が高い情報とは言えません。例えば、2人の身近な人がそう語ったのであれば、十分確証は高いと言え、「AさんやBさんの家族や知人がそう語った」と記すべきでしょう。

単なる噂を書いた文章というのは、フェイクニュースに近いと言えます。フェイクニュースではないということを示すためにも、誰がそう言っているのか、結論に至った判断根拠を示すべきです。

誰が言っているのかを示すと、情報の質は高まる

客観か主観かをはっきりさせる

文章を書くとき、客観と主観は対極にあります。主観とは、自分の立場や意見を表すことで、客観は、特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりする様子のことです。

ライティングの場合、客観性を求められることが多いですが、中には、エッセイや口コミのように、自分の考えや感想を書く場合もあります。重要なことは、客観的に書いているのか、自分の意見や感想を言っているのかが、読んでいる人に判断できるように表現することです。

ケース3
日焼け止めに求められるのは、紫外線を防ぐ効果の高さである

このような文章を読んだとき、一般的にそう言われているのか、書いた人がそう思っているのかが分かりません。日焼け止めを使う主たる目的は、紫外線から肌を守ることですが、誰もがそうとは限りません。

例えば、日焼け止めの効果はそこそこでいいから、つけた時の肌のベタベタ感を和らげたい人もいるでしょう。または、紫外線防御の効果はそれほど高くなくてもいいから、価格の安いものが欲しいという人もいるでしょう。

この文章が主観的なものであるならば、「日焼け止めに求められるのは、紫外線を防ぐ効果の高さであると私は思う」などと、筆者の意見であることがわかる表現にすると無難です。口コミコーナーなど、ほとんどの記事が主観である場合はいいのですが、客観と主観が混在する文章の場合は、はっきりさせる必要があります。

一方で、客観性を強めたい場合は、「〇〇のアンケート調査によると、日焼け止めに求められるのは、紫外線を防ぐ効果の高さである」と人々の意見を集めたアンケート調査の根拠を示したり、アンケートがない場合は「紫外線を防ぐ効果の高さであるという意見が多い」などと断定した表現を避けるといいでしょう。

文章を書いてみて、その表現が客観性を問われるかどうかが分からない場合は、書いた後に読み返して、つっこみどころがあるかどうかで判断します。

表現 日焼け止めに求められるのは、紫外線を防ぐ効果の高さである。

つっこみ 「え~そうか?安いほうがいいという人もいるでしょ」

と言った具合です。

セルフつっこみで、問題となりそうな表現をチェック

まとめ

客観的な方法で事実に基づいた文章を書くのか、体験談や感想、自分の意見を書くのかで正確な原稿の書き方は違ってきます。大事なことは、意識して、それらを書き分けることができるかどうかです。

自分の意見なのか、誰かに聞いたことなのか、学術研究で示されていることなのか、いろいろな表現が混在し、それが整理されていない文章は、読者に誤解を与える恐れがあります。

「誰かがそう言っていた」と情報源を明かしたら、何を書いてもいいというわけではありません。その人の意見が誰かを傷つける表現だったり、誤解を与える間違った解釈である場合は、ライターや編集者が事実関係をチェックし、伝えるべきかどうかという判断や、問題があれば掲載しないという判断をしなければなりません。

誰かの意見であっても、それを右から左に垂れ流してしまうと、フェイクニュースの片棒を担ぐことになりかねません。