新聞の特徴を知り、効果的な学習に活用する方法

小学校や中学校、高校の宿題や課題として、生徒たちが調べたことを新聞のカタチにしてまとめたり、新聞を資料として活用するなど、新聞を使った教育が広がっています。このように新聞を教材として活用する取り組みは、NIE(Newspaper in Education、エヌ・アイ・イー)と呼ばれ、1930年代にアメリカで始まりました。日本でも1980年代後半から新聞の活用が始まり、今では学校の先生によって、さまざまな工夫が行われています。

中学校の国語や社会での活用が広がっている

新聞を教育に活用するアイデアは、学校や先生によってさまざまです。小学校では、新聞から知っている漢字を選び出したり、新聞で使われている言葉を自分でも使ってみたり、記事を要約するなど、低学年から高学年の成長に合わせて、新聞を読んで、活用する方法などを身に付けます。

中学校では、国語科や社会科を中心に活用されています。国語科では、社説やコラムなどを読んで、要旨をとらえて、自分の考えをまとめたりします、社会科では、地理や公民、歴史などの授業で資料として活用したり、地球環境問題や少子高齢化問題など、身の回りの社会的課題を考える資料としても活用されます。

また、資料として新聞を活用するだけでなく、自分たちが調べたことについて、記事を書いたり、見出しを付けたりして、新聞のカタチにしてまとめるような授業もあります。こうした活用事例は、日本新聞協会が運営しているNIEのウエブサイトなどで調べることができます。また、学校で新聞を二次利用する時に知っておくべきルールなどについても知ることができます。

MEMO

新聞記者は、社会で起きているさまざまな出来事を取材し、原稿を書きます。編集部では、限られたスペースと時間の中で、多くの記事を編集し、新聞のカタチに仕上げていきます。新聞がどのような工夫でつくられているのかを知ることで、新聞を活用した学習の効果を飛躍的に上げることが可能です。

「5W1H」の6要素とは?新聞記事の書き方を知る

新聞記者に求められる記事を書く際の原則は「正確に早く書く」ということです。さらに、読者がスムーズに記事の内容を理解できるように「分かりやすく書く」ことも重要です。また、時間をかけずに読めるように「コンパクトにまとめて書く」技術も求められます。

新聞記者が記事の原則を守るために意識しているのが、「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」という「6つの要素」です。それぞれの英語の疑問詞の頭文字を取って「5W1H」と言います。

  • いつ(When)
  • どこで(Where)
  • 誰が(Who)
  • なにを(What)
  • なぜ(Why)
  • どのように(How)

もうひとつの新聞記事の特徴は、結論を先に盛り込んだり、重要な要素から順番に書いていく「逆三角形」の文体です。文章構成は「起承転結」や「序論・本論・結論」などのパターンを踏襲することが多くみられます。

これに対し、新聞記事は、社説やエッセイなどを除く一般記事の場合は先に結論を書き、その後に説明を加える「逆三角形」が主流です。新聞を編集している最中にも、新しいニュースはどんどん送られてきます。新しい記事を入れるために、すでに出稿した記事を短くする作業が多いため、後ろから削っていけば重要な結論を落とさずにすむからです。

見出し、リード文、本文。それぞれの役割を知る

多くの新聞記事には見出し、リード(前文)、本文に分けられて書かれていて、それぞれの特徴を知ると、学習への利用がスムーズに進みます。

記事の内容を一目で伝えるいわばタイトルです。記事を書いた記者が「仮見出し」を付け、デスクや校閲のチェックを経て、紙面のレイアウトを考える整理記者が見出しを付けます。インターネットの記事の見出しは数十文字を使うこともあり、検索されやすいようにキーワードを選んでいるのが特徴です。

これに対し、紙の新聞はスペースに限りがあるほか、短い字数で記事のエッセンスを言い表すことが重要視されているのが特徴です。見出しをひと目見て、記事の中身を読みたいと思わせるウィットの利いた表現を目指し、整理記者たちが日々頭をひねっています。

リードは、原稿のエッセンスを簡潔にまとめた数十字の文章です。記事の第一段落にニュースの概要を記述します。リード文だけを読んでも、記事の内容を理解できるように工夫します。リード文の後、本文の段落が続きます。本文は段落ごとに一つの内容をまとめられ、重要度の高ものから順番に並べるよう心掛けられています。

新聞記事の資料を探すには、まず見出しに注目。次にリードだけ読めば内容はわかるはず

コンパクトな文章の基本について知りたい方はこちら▼
ニュース記事の書き方を参考に文章力をアップさせよう

新聞記事の種類とつくりを知る

資料としての新聞記事を探したり、学習者の手で新聞を作る場合、新聞記事の種類やつくりを知っておくと便利です。

新聞記事の主な種類

ストレートニュース
政治・経済・国際・社会・文化・スポーツなどのそれぞれのジャンルで今起こっていることをストレートに伝えます。

 

5W1Hの原則に従って記事はつくられ、ニュース性が高ければ1面や総合面、政治、経済、国際、社会、文化、スポーツなどの各ページのトップニュースを飾ることもあれば、段もの、ベタ記事などで報道されることもある。

カバーストーリー
今、注目を集めている社会問題の背景を探ったり、問題点を浮き彫りにするような記事。5W1Hの原則にとらわれず、物語風の読ませる記事づくりをこころがけている。1面トップを飾ることもあれば、連載形式で報道されることもあります。
本記とサイド記事
本記は、ストレートニュースの形で5W1Hの原則に合わせて書いている。サイド記事は、ストレートニュースの背景や今後に予測される影響を報道したり、ニュースの解説を添えて、ニュースが示す意味を深堀する。

 

注目度の高いストレートニュースの脇に配置されていたり、ストレートニュースの本記に(○○面に関連記事)などと記されている。

スクープ記事
記者が問題点について調べたり、隠れた事実を見つけ出して、報道する「調査報道」による記事や、注目されている取材対象に食い込んで、他社に先駆けて、一歩先のニュースを報道するような記事。スクープをされた他社は、事実関係が確認できれば「追っかけ記事」と言う形で遅れて報道する。
インタビュー記事
話題の人にインタビューし、記事に仕上げているものです。質問と回答が分かるような一問一答形式や談話形式の記事があります。また、インタビューした内容をもとに、周辺取材を加えて、ストレートニュースに仕上げる場合もあります。
広告、記事広告
新聞の段下や題字下、記事中、記事下、突き出しなどのスペースに広告枠があるケースがあります。また、記事のような形の広告もあり「記事広告」と呼ばれています。記事広告は通常、一般のニュース記事と見分けがつくように、(広告)(PR)などの表記があります。
MEMO

記事の種類や新聞のつくりを知っていると、資料として活用する時に最適な記事を検索するための参考になります。例えば、同じ内容について書いた記事でも、サイド記事だけだと情報は十分ではありません。どこかに本記の記事があるはずで、それを見つけてそろえて読むと、理解度が増します。

 

また、スクープ記事は、後に他の新聞社も「追っかけ記事」を掲載したかどうかで、記事の信頼性が高まります。

新聞のレイアウト(割付)の基本を知る

新聞記事を読み慣れていない人にとっては、記事を読んでいると、記事の流れやつながり、終わりが分からなくなってしまうケースもあります。新聞のレイアウトの基本を知っていると、読みやすくなるだけでなく、学校の課題などで、自分が新聞を作るときに非常に便利です。

記事の流れの基本は、右上から左下へ水の流れのように落ちていきます。写真やグラフ、表、仕切り線などの障害物に当たると、下の段の右側にある写真や仕切りや紙面のはじっこに流れ、また、左側への障害物へ向かって流れていきます。

トップ記事には複数の見出しがあるのが一般的。見出しの種類は、横トッパンや段見出し、ベタ見出し、パソコンのグラフィック機能を駆使した飾り見出しなどがあります。

新聞の記事欄は一般的に、12段から15段の間で構成されていて、一段に10数文字の記事が入ります。記事の流れは、この段にそって流れますが、紙面にアクセントを加えるため、記事を畳んだり、ハコ組みにしたり、横組にしたりして、読みやすいように工夫しています。

まとめ

インターネットの登場で、紙の新聞を読む人が減っていますが、新聞は限られた時間とスペースで、以下にわかりやすく伝えるかと言う職人技が凝縮されています。欧米の新聞と違い、日本語で書かれた日本の新聞は縦書きで、ノウハウも違います。

新聞を教育に活用するという取り組みが広がる中で、日本の新聞独特のノウハウを知っておくと、学習効果が一段と高くなり、自分だけの新聞をつくることができ、課題に取り組む楽しさも広がります。