シンプルで明快!記者に誤報させないプレスリリースの書き方

記者が興味を持ったプレスリリースでも、一読して意味がわからなかったり、二通りの意味がある文章が盛り込まれていたりすると、記者が原稿にする熱意が冷めてしまいます。シンプルで明快な文章は記者に好まれるだけでなく、広報スタッフが問い合わせに対応する労力を減らすことにも貢献します。

句読点を使う。助詞「は」と「が」を使い分ける

「何がなんだ」「何がどうした」を表す主語と述語は、プレスリリースの肝になります。主語を明確に示すことは、何について書いている文章かを限定します。プレスリリースの場合、主語はリリースを発信している当事者であることが多いですが、他の企業とのコラボの場合もあり、主語を明確にすることは誤解を避けるために大事です。

ケース1
株式会社Aは出資先の株式会社Bが物流事業で提携関係にある株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。

例えば、ケース1の文章は主語と述語の関係がわかりにくくなってしまっています。述語(述部)は株式会社Cとの通販事業での業務委託契約の解消ですが、主語が株式会社Aなのか、株式会社Bなのかはっきりせず、2通りの意味を持ってしまい、誤解を生む可能性があります。

  1. 株式会社Aが主語の場合は、AがCとの業務委託契約を解消するという意味です。
  2. 株式会社Bが主語の場合は、BがCとの業務委託契約を解消するという意味です。

1の意味である場合(株式会社Aが主語の場合)
主語(主部)の後に句点を付けると区別しやすくなります。

株式会社Aは、出資先の株式会社Bが物流事業で提携関係にある株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。

2の意味である場合(株式会社Bが主語の場合)
読点「、」を使うとともに、助詞「は」と「が」の使い分けによって、主語を明確にすることができます。

株式会社Aが出資先の株式会社Bは、物流事業で提携先にある株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。

主語と述語の語順を近づける

読点や助詞による修正で、主語と述語の関係を示しましたが、それでもまだすっきりしません。再びケース1で考えてみましょう。

ケース1
株式会社Aは出資先の株式会社Bが物流事業で提携関係にある株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。

ややこしく感じるのは、株式会社A、株式会社B、株式会社Cのそれぞれの関係が複雑だからです。3社の関係を整理します。

  • 株式会社A=株式会社Bに出資している。
  • 株式会社B=株式会社Aから出資を受けている。
  • 株式会社C=株式会社Bと通販事業で業務委託契約を結んでいる。

そもそも、株式会社Bと株式会社Cを説明している修飾語(修飾部)が長いため、株式会社Aが主語である場合は、述部の「株式会社Cとの業務委託契約の解消」が遠すぎます。まず、「主語+述語」の文章をシンプルに書くと、分かりやすくなります。

株式会社Aは、株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。

主語と述語だけのシンプルな文章にした弊害で、株式会社Bと株式会社Cとの関係に関する記述が省かれてしまいました。この2社の関係が今回のプレスリリースにおいて、記者に知ってもらいたい重要な要素である場合は、リード文の中に記しておくと良いでしょう。

株式会社Aは、株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。なお、株式会社Cは、株式会社Aが出資する株式会社Bと物流事業で提携しています。

また、株式会社Bの役割や、BとCの提携関係がそれほど重要でない場合は、説明資料として触れる程度でも良いでしょう。

リード文で株式会社Bを登場させると、プレスリリースを読んだ記者は、株式会社Bと株式会社Cの今後の提携関係の行方に関心が集まります。

BとCの物流事業での協力関係は今後も継続することを強調したい場合は?

リード文でそのことを触れておけば、記者の邪推を火消しする効果が期待できます。

解答例

株式会社Aは、株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。なお、株式会社Cは、株式会社Aが出資する株式会社Bと物流事業で提携しており、BとCの提携は今後も継続します。

一方で、主語が株式会社Bの場合は、主語と述語の関係をシンプルにすると以下のようになります。

株式会社Bは、株式会社Cとの通販事業での業務委託契約を解消します。

今度は、株式会社Aの記述が抜け落ちてしまいました。しかし、この場合はBとCの関係性がニュースの中心になるので、AがBに出資している以外は、Cとの協力において重要な関係がなければ、リード文に記載する必要はありません。

それよりも、BとCの物流事業と通販事業についての具体的な説明や、提携と業務委託の契約の中身の違いについて、関心が集まります。

修飾語と被修飾語の語順を近づける

主語と述語の関係と同じように、修飾するものと修飾されるものの語順が遠い場合も、読んでいる記者の誤解を招く要因になります。

ケース2
「良い商品を安く」をモットーにスーパーマーケット事業を展開している株式会社Dは、店舗網を拡大するために第三者割当増資を実施します。引受先は、インターネット通販グループのEの流通事業会社Fの子会社Gです。

株式会社Dが新しい店舗を設けるための資金をねん出するために、増資を実施するというリリースです。増資の引き受け先は、ネット通販大手のEではなく、グループ会社のG社です。増資の引受先はG社として、G社の説明として、EやFについて言及するほうが、読む側にとっては親切です。

ニュースバリューを高めるために、ネット通販大手Eの名前を出したい時はどうすればいい?

リリースの見出しに「Eグループ」と出すと効果的です。

解答例

引受先は、インターネット通販グループEのグループ会社Gです。

Eを見出しに取れるように、リード分に盛り込むのは良いですが、Gとのつながりを示すためにFの記述まで盛り込むと、修飾部が長くなり過ぎてしまいます。速報対応の記者は、時間との勝負なので、紛らわしい記述は誤解を生む原因になります。

まとめ

プレスリリースの文章は、わかりやすいことが重要です。プレスリリースは、メディアという仲介人の力を借りて、世の中の人にしってもらいます。最初の読者である記者は、文章を読んだり、書いたりする専門家ですが、その記者でもすっと頭に入ってこない文章だと、情報は広がっていきません。

ましてや、今では、プレスリリース配信会社の普及や、ブロガー、インフルエンサーたちの登場で、プレスリリースは記者以外の人たちの目に触れる機会が増えています。すっきり、明快な文章を心がけましょう。

ポイントは、「主語+述語」を基本とした短くシンプルな文章です。一文で言い切ってしまうのはカッコいいですが、修飾語が長過ぎると難解な文章になりがちです。主語を明確にして、「何がどうした」というシンプルな文章を重ねていくと、伝わる力が増すはずです。