ニュース記事の書き方を参考に文章力をアップさせよう

新聞やニュースサイトに掲載されている記事は、コンパクトにまとまっていて、分かりやすく書かれています。新聞記者は文章のプロですが、小説家や詩人のように、美しい文章を書くわけではありません。新聞記者は、情報をいち早く届けることが使命であり、「正確さ」と「わかりやすさ」を重視した原稿を遅滞なくまとめる技術を持っています。その技術は、コンパクトな文章の基本とも言え、文章力を上達させたい人にとっては役に立つノウハウになるはずです。

新聞記事の基本は「5W1H」

新聞記事だけでなく、文章を書くという行為は、誰かに何かを伝えるというコミュニケーションのツールです。

  • いつ(When)
  • どこで(Where)
  • 誰が(Who)
  • なにを(What)
  • なぜ(Why)
  • どのように(How)

という6要素を明らかにすることが極めて重要になってきます。

この6要素のことを、頭文字を取って、「5W1H」と言い、新聞記者は新人のころから、「5W1H」を明らかにする記事の書き方を叩き込まれます。

新聞記事では、「5W1H」のどの要素が一番重要なのかについては、それぞれのニュースによって違ってきます。またどんな記事にも、必ず6要素が含まれているというわけではありません。

「5W1H」のうち、何がニュースなのか。そのニュース価値の判断が重要になります。例えば、一般人が行ってもニュースにならない事柄でも、有名人が行えば、大きく取り上げられることもあります。有名人の結婚などがこれにあたります。この時は、「誰が(Who)」にニュース価値があるので、「誰が(Who)」の情報を詳しく伝えることになります。

例えば、以下のような場合です。

ケース1
青年実業家のA社長と、人気女優のBさんが20××年〇月△日に、都内の□□ホテルで挙式することが明らかになった。

この場合、A社長とBさんの話題性を比較して、

・A社長のほうが、ネームバリューが高い場合
・Bさんのほうが、ネームバリューが高い場合

で、書き方は多少違ってきます。両者ともニュース価値の高い人であれば、ビッグカップルの誕生がニュースになります。

「逆三角形」の文体が基本

新聞記事では、重要な要素から順番に書いていく「逆三角形」の文体を基本としています。記事の書き出しの一段落目をリード文と言います。ニュースの概要を書いたものですが、このリード文を読めば、ニュースの大まかな内容が分かるようにします。

リード文にエッセンスが詰め込まれている理由は、忙しい読者が、見出しとリード文を読むだけで、その記事が分かるようにするためです。

また、紙メディアである新聞の記事は、新しいニュースが入ると、レイアウトを変えなければなりません。記事がきれいな逆三角形になっていると、レイアウトを変えたときに、記事がはみ出した場合でも、後ろの段落から削っていけばいいので、一刻を争うときには便利です。

「逆三角形」の文体が適しているのは、新聞記事の中の多くを占めているニュース記事です。「5W1H」の要素を盛り込みながら、読者に伝えたいこと、ニュース性の高いものから、順序良く書いていきます。このほか、論説文や解説文では「序論、本論、結論」と論文のようにまとめていく書き方や、現場のルポのように「起承転結」でまとめていく書き方もあります。

何を伝えるか。段落ごとにまとめておく

新聞記事の基本であるニュース記事では、リード文に続けて、それぞれのニュースの要素を詳しく説明します。リード文で記事のエッセンスを伝えますが、読者がそのニュースについて「具体的にはどうなのか」を示し、頭の中でイメージできるように工夫します。

この時、大事なことは、段落ごとにまとまりのある文章にしておくことです。

情報が、あっちに行ったりこっちに行ったり、重複したり、飛躍したりすると、読者には非常に読みにくい記事になります。
MEMO

繰り返しになりますが、まとまりのある段落を、重要性の高いものから伝えていくことで、新しいニュースが入ったときに、後ろの段落から短く編集したり、削除することで、ニュースの重要な要素は残るようにできます。

ひとつの段落の文字数が長くなりすぎないように気を付けます。段落はひとつのまとまりで、同じような内容を記述していますが、あまりに長くなりすぎると読みにくいので、15行程度(160字から170字程度)で一度改行します。とくに、リード文は、重要な要素をなるべく盛り込もうとするので、長くなる傾向があるので注意が必要です。

それでは、先ほどの青年実業家Aさんと、女優Bさんの結婚のケースで考えてもみましょう。

ケース2
青年実業家のA社長と、人気女優のBさんが20××年〇月△日に、結婚することが明らかになった。A社長は米国のスタートアップ企業が計画している民間人初の宇宙旅行に参加することが予定されていたが、Bさんも同伴し、宇宙船の中で挙式をあげる。

青年実業家のA社長と、人気女優のBさんが20××年〇月△日に、結婚することが明らかになった。A社長は米国のスタートアップ企業が計画している民間人初の宇宙旅行に参加することが予定されていたが、Bさんも同伴し、宇宙船の中で挙式をあげる。

A社長とBさんのどちらのネームバリューが高いかを考えることも大事ですが、宇宙船の中で結婚式を挙げることのほうが、ニュースバリューが高くなるという判断も成り立ちます。

その場合、リード文の後に続く文章としては、読者が知りたいと思われる「宇宙婚」の内容を書いていきます。

・新郎新婦は宇宙服姿で挙式を挙げるのか。
・披露宴はあるのか。
・宇宙船から見える景色はどのようなものか(地球が見えたりするのか)。
・招待客は誰か。
・テレビ中継されるのか。

など、読者が関心を持ちそうな事柄を書いていきます。

この時、具体的な結婚式や披露宴の内容については未定であることが考えられます。新聞記事は事実に基づいて書くので、分かっていることと、今後の計画や可能性などを分けて、読者に誤解を与えないように注意します。

見出し(タイトル)は少ない文字で、読者の関心を引き付ける

新聞記事の見出しは、読者が最初に目にする情報です。その記事のニュースのダイジェストであると同時に、その記事を読むか読まないかを決める記事の「看板」の役割を果たします。

見出しはまず、「目に留まる」ことが大事です。また、専門用語は避け、誰でもわかる平易な言葉を選びます。

原稿の扱いによって、見出しの本数は違いますが、たいていは1~2本です。段見出しの場合、主見出しと脇見出しで構成されるのが一般的です。主見出しの文字数は6~9、脇見出しは9~10程度です。

先ほどのA社長と女優Bさんの結婚の例で考えてみましょう。

ニュースの肝となるのは、「宇宙船の中で結婚式を挙げる」と考えます。しかし、これだけで、13文字になってしまいます。この13文字を端的に、しかもキャッチな言い方にしようとすると、「宇宙婚」という言葉がぴったりです。

「A社長、Bさん宇宙婚」

という見出しではどうでしょうか。AやBも本来は2文字程度あると考えられるので、少し長くなってしまいますが、許容範囲です。このほかにも、2本見出しにしたり、トッパン見出し(グラフィック機能で制作した文字)を使うなど、方法はいろいろあります。

まとめ

Webライティングも紙メディア向けのライティングも、ライティングの基本技術は同じですが、新聞には独特の技術が求められます。その昔、鉛の活字を組み合わせて、輪転機で印刷していたため、編集、組版、印刷の一連の工程をスムーズにするための技術が育ったのです。

わかりやすく、コンパクトに書くという技術や、短い単語の組み合わせで、インパクトのある見出しを作る技術などは、リポートやビジネス文書など幅広いライティング技術に応用ができます。