5W1Hをうっかり忘れると、残念なプレスリリースに

プレスリリースを書く際の基本として、「5W1H」があります。「Who(だれが)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」を伝えることの重要性を表す言葉です。伝えるべき5W1Hをうっかり忘れることで、せっかく素晴らしいプレスリリースが台無しになってしまいます。

5W1Hのどれが大事かはケース・バイ・ケース

コミュニケーションの基本であり、プレスリリースを書く際に中心になるのは、5W1Hの6つの要素です。しかし、プレスリリースを発信する側が何を伝えたいかはケース・バイ・ケースであり、必ず6要素がすべて必要になるとは限りません。

プレスリリースを書く際には、6要素の中で、何を伝えたいのかを判断し、知ってもらいたい要素を中心に文章を組み立てていきます。

6要素のうち、プレスリリースの骨になるのはどれかを考える。

  • Who(だれが)人や会社など主体となるもの
  • When(いつ)日時
  • Where(どこで)場所
  • What(なにを)開発した商品や開催するイベントなど目的語になるもの
  • Why(なぜ)どうして、リリースを行うのか、その狙い
  • How(どのように)具体的な方法

繰り返しになりますが、プレスリリースの内容によっては、6要素をすべて伝える必要がないかもしれません。ただ、忘れてはならないのは、プレスリリースを読む側が必要になる情報は必ず盛り込んでおくことです。

MEMO

プレスリリースの読み手であるメディアが知りたい情報が欠けてしまっていると、メディアには良い印象を与えません。さして緊急を要しないプレスリリースの場合は後回しにされるし、重要なプレスリリースの場合は、余計な問い合わせを増やすことになります。

主語「Who」を省略したために、メディアに採用されず

ケース1
財団法人、A研究所の協力を得て、接触面の温度や湿度に対応し、自動的に表面温度を調整できる新しい繊維を開発しました。アパレルメーカーB株式会社の技術協力を得て、寒暖差の大きい季節の肌着としての商品開発を進めます。

ケース1は、繊維メーカーの株式会社Cの架空のプレスリリースです。夏には涼しく、冬には温かく、1着で一年中着ることができる肌着が、将来店頭に並ぶ可能性を強く感じさせるもので、ニュースとして取り上げられるのに十分な価値を持つネタです。

しかし、上記はプレスリリースの書き出しですが、肝心の主語が抜けています。リリースの右上には発表者である株式会社Cの社名が入っているので、主語は「株式会社C」であることが想像できますが、リード文に書いていないので、確証がありません。読んだ記者は確認を取らなければいけません。

問い合わせ先である株式会社Cの広報部に電話をかけましたが、「担当者が他の問い合わせに対応しています」との返事。しかたなく、広報担当者からの折り返し電話を待つことになりましたが、なかなか折り返しがありません。次の予定が詰まっているので、このプレスリリースを記事にすることはあきらざるを得ませんでした。

MEMO

インターネットが登場する前は、プレスリリースをそのまま記事にすることはめったになく、必ず確認の電話をいれました。今は速報性を重要視するネットニュース全盛の時代です。ニュースが入った時点で、できるだけ早く記事をアップするのが基本に変わりました。

一読して内容を把握でき、必要な情報がすべて載っている「完全なプレスリリース」を目指そう。

日時、場所の間違いはとんでもない悲劇を生む

イベント開催のお知らせなどのプレスリリースで、開催の日時や場所を間違えるというとんでもないミスは、なさそうであり得るミスです。プレスリリースが出来上がり、電子メールやファックスで配信されてから、間違いに気づき、訂正のプレスリリースを再度配信するという事態は結構あるようです。

しかし、ネットニュースの登場で速報が基本の時代になり、最初のリリースで情報がすでに拡散してしまっている可能性があります。それを見た人たちが、間違った日時や間違った場所に行ってしまうという悲劇は実際に起こります。

MEMO

When(いつ)、Where(どこで)が間違ってします原因のひとつに、前回開いたイベントのリリースを上書きしたときに変更し忘れたり、計画段階で仮に置いていた日時や場所を変更するのを忘れたりというケースが多いようです。

5W1Hの記述をミスると、これまでの努力が水の泡に

未確定な要素は、「未確定」であることを知らせる

プレスリリースを書く際に、5W1Hの要素に注意を払うのは、メディアに記事を書くライター側も、5W1Hの要素を記事の中に盛り込むように考えているからです。このため、5W1Hが抜けている場合、プレスリリースを書いている担当者に問い合わせる必要が出てきます。

ケース2
ゲームソフト開発会社の株式会社Dは、累計販売数1億本の人気タイトル「愛犬マックスの不思議な大冒険」のシリーズ第5弾の開発に着手します。主人公の愛犬マックスが、お宝の「黄金のキュウリ」を求めて、さまざまな冒険を繰り広げるRPG(ロールプレイングゲーム)。今回の冒険の舞台は、中世ヨーロッパの架空の国「ワンコ公告」です。

人気ゲームソフトのシリーズ最新作ができるということで、ニュース性はありそうです。ゲームの内容についての記述は十分ですが、肝心の「When(いつ)」がありません。このリード文だけでなく、リリースのどこを探しても見当たらない場合は、メディア側が記事を書こうとすると、問い合わせるしかありません。

このように、ライター側は、プレスリリースを見たときに、5W1Hの中から、ニュースとなる要素を探します。ケース1の場合、「愛犬マックスの第5弾、〇年〇月発売」との見出しが取れる記事を書きたいと考えるライターが多いはずです。

もし、ゲームソフトの発売時期を含め、細かなスケジュールが決まっていない場合は、読み手側が納得できるだけの情報を示すことが大事です。

例えば、めどとなる時間軸を示します。

  • 20XX年秋ごろの発売をめどに開発を進めます。
  • 20XX年のクリスマス商戦に向けて、開発を急ぎます。

または、全く示せない場合は、その情報を示します。

  • 発売は未定
  • 決まり次第、速やかに公表します。
MEMO

話題の商品の発売日が、資材の高騰や人材確保難などの理由でスケジュール通りに進まず、発売が遅れることがあります。こうした時には、遅れた事実とその理由について、プレスリリースを出すということも珍しくありません。

日程が決まっていないからと言って、プレスリリースで何も触れないのは帰って不自然。

まとめ

「5W1H」はコミュニケーションの基本です。プレスリリースの書き始めの頃は、しっかりと意識するのですが、慣れてしまうとうっかり書き忘れることは珍しくありません。

ベテランになればなるほど、プレスリリースを発信する側が伝えたいことについて、よりわかりやすく、より詳しく書こうと苦心します。しかし、その結果、肝心の重要な要素が抜けてしまうと、画竜点睛を欠くどころか、「プレスリリースを出さなかったほうが良かった」という事態になりかねません。

慣れてきたころにこそ、基本に立ち返ることが大切です。