新聞記事は、短い時間で読んだだけで、何が書いてあるのかを理解できるような工夫が詰まっています。中でも、リード文(前文)は、それを読むと、記事のおおまかな内容が把握できるようになっています。
学校での作文やビジネス文章を作成するときも、自分の伝えたいことが、読者に素早く伝わるように書く技術は重要です。新聞のリード文の書き方を学ぶことで、さまざまな文章の作成に応用できるはずです。
リード文を読めば、ニュースが分かる
新聞記事のリード文は記事の最初の段落にあるため、前文とも言います。一読すると、記事に書かれているニュースの内容が分かるように書かれています。このため、記事の看板の役割を果たしている見出し(タイトル)も、リード文の中から言葉を拾って、付けられているケースが多いのです。
新聞の記事は、リード文に続き、本文があります。本文では、ニュースの内容を詳しく書いたり、その背景などについて説明を加えたりする役目を果たしています。リード文の中に盛り込まれているエッセンスについて具体的に書いたり、補足する役目を果たしているので、逆に言えば、リード文は本文を要約した文章でもあるのです。
ただ、新聞記事では、リード文と本文では、なるべく同じ内容の繰り返しになることを避けています。また、新聞記事は「逆三角形」スタイルになっていて、大事なものから順番に書かれています。
紙面のスペースやニュースバリューの変更などにより、記事が短く編集されることが多いからです。編集時間内にトップニュースが飛び込んで切ることは日常茶飯事などので、編集者が急に原稿を短くするときには、末尾の段落から削除していくほうがスムーズに編集できるという理由もあります。
記事の構成と、リード文・本文の役割を知る
リード文
大手自動車メーカーが相次いで国内での減産に踏み切っている。長期化する円高を背景に海外輸出が低迷しているためだ。A社、B社、C社とも国内工場で生産し、海外に輸出している中小型車の生産を減らす計画だ。
本文1
A社は、○○県の○○工場で小型車のXなどを計画比で月3000台の生産を減らす。円高ドル安の影響で、米国市場向けのXの価格が値上がりし、販売台数が前年同期比で20%落ち込んでいるのが理由だ。
本文2
また、B社も、円高ユーロ安を背景に欧州で人気の小型車Yの販売が不振で、△△県の△△工場のYの生産台数を1000台減らす。さらに、C社も円高を理由に、主力の中型車Zが欧米市場とアジア市場でも売れ行きが落ち込んでおり、□□県□□工場でのZの生産台数を500台減らす方針だ。
本文3
米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年11月、大規模な追加緩和の実施を決めたことをきっかけに、外国為替市場では比較的安全資産とされる円が買われる傾向が強まり、円高が進んでいる。
リード文は、国内の大手自動車メーカーのうち、3社でみられる「中小型車の減産」という共通項を伝えています。その理由は「円高」で、共通しています。リード文を読むだけで、「国内自動車メーカー3社が円高を理由に中小型車を減産している」というニュースのエッセンスがわかります。
続いて、本文1にはA社の減産について内容を詳しく説明しています。具体的には、○○工場で1か月当たりの「X」の生産台数を3000台減らすということと、Xの米国市場での販売価格が、為替の変動により値上がりしているため、売れなくなっているという事情について述べています。
本文2は、B社とC社の減産を説明しています。減産幅はB社の「Y」が月産1000台、C社の「Z」が月産500台です。減産幅は、本文1で月産であることを示していますので、本文2では省いています。
本文3は、減産の共通する原因である「円高」がもたらされた背景についての分析を述べています。
例題 以下の取材メモを参考にして、リード文を使ってみよう。
回答例
首都圏を中心にチェーン展開する食品スーパーの1月の売上高が急伸している。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために政府が緊急事態宣言を発令したことにより、外食から中食や内食へとシフトしているためだ。食品スーパーA、B、Cとも前年同期比で二桁の伸びを示している。
まとめ
新聞記事のリード文は、本文の内容を要約しています。一方、本文は、リード文で記述した内容について、具体的に説明したり、背景を分析したりしています。このため、リード文を書くことができれば、本文を書き下ろしていくことは比較的簡単です。
上記の回答例でいえば、本文は食品スーパーA、B、C社の具体的な業績向上の数字を並べていくほか、緊急事態宣言で夜間の外食が制限される反動で、弁当や総菜などの「中食」、家庭で作る「内食」が増えていることを述べます。
日ごろの新聞記事をよく読み、どのように書いているのかを知っておくと、ビジネスで使う文章や作文などにも活かすことができるはずです。