【伝わる文章講座】言葉選びと並べ方のコツ

伝わる文章を書くためには、どの言葉を使うかの選択は極めて重要です。言葉選びは、読者とその言葉の意味を共有できるかどうかを考えます。また、文章の中で言葉を並べる際は、言葉と言葉の関係を明確にするように気を配ることが大事です。

何を伝えたいのかを明らかにするキーワード

文章を書く際に、最も大事な言葉選びは、その文章で何を伝えたいかのテーマを表す言葉です。ここで選んだ言葉を使った文(センテンス)が、その段落や文章全体の意味を一文で言い表す「トピックセンテンス」となります。

ここで選んだキーワードは、その段落、または文章全体で言いたいことを表す大事な言葉です。一つの単語で、多くの読者に意味を伝えることが難しいと考えられるときは、その言葉を説明する「枕詞」を付けると効果的です。

例文1

近年、夏のゲリラ豪雨や猛暑などの異常気象が頻発する原因のひとつに地球温暖化が指摘されています。このため、地球温暖化につながる温室効果ガスの排出をゼロにする「脱炭素社会」の実現が大きな課題です。

この文章のテーマを表す「一語」はどれかと問われると、「脱炭素社会」になります。脱炭素社会だけでは、何を指しているのか伝わりにくいと考えた場合、「地球温暖化につながる温室効果ガスの排出をゼロにする」という枕詞を付けます。枕詞は、文章の中におけるその言葉の定義のようなものです。

言葉と言葉の関係をはっきりさせる

複数の修飾語が同じ単語を修飾する場合は、他意を生まないような順序に並べることが大事です。誤解を生む可能性がある場合は、読点「、」を使うことによって、関係性を明白にすることができます。

例文2

海を修飾している以下の2つの文節を一つにつなげてみよう。

・青い海
・イルカが群れる海

① 青いイルカが群れる海
② イルカが群れる青い海

➁は問題なく読めますが、①の場合、「青い」の修飾語が近くの「イルカ」を形容していると勘違いされる恐れがあります。この場合は、「青い、イルカが群れる海」と読点を入れることで間違いを防ぐことができます。

演習1

次の2つの文を1つの文章で表してみよう。
・次世代のエネルギーとして期待されている水素
・二酸化炭素を排出しない水素

回答例
① 二酸化炭素を排出しない次世代のエネルギーとして期待されている水素
② 次世代のエネルギーとして期待されている、二酸化炭素を排出しない水素

➁の順序の場合、そのままつなげると次世代のエネルギーとして期待されているのが二酸化炭素であるとの誤解を招いてしまいます。このため、「次世代のエネルギーとして期待されている、二酸化炭素を排出しない水素」と読点を入れています。

言葉を並列させる場合の配慮

文章を作るために、言葉を並列させることがあります。この時にも、どの言葉を使うと効果的なのかに気を配ることが大事です。

演習2

次の説明文を参考にして、温室効果ガスが発生する具体例を挙げてみよう。

「生活に不可欠な電気などのエネルギーを作るには、大量の化石燃料が使われ、大量の二酸化炭素が排出されます。自動車はガソリンを燃焼させるので、二酸化炭素が発生します。テレビなど電化製品を使ったり、自動車で楽に移動できる社会の進展は、地球温暖化を加速させることにつながります」

回答例

① 温室効果ガスは、「テレビなどの電化製品の使用」「自動車などを使った移動」などの場面で発生します。
② 温室効果ガスは、「電気エネルギーの生成」や「自動車のガソリンの燃焼」などの場面で発生します。

説明文は「生成された電気エネルギーを使って、テレビなどの電化製品を使うことができます」「ガソリンの燃焼によって得られたエネルギーを使って、自動車などを使って移動することができます」という二つの要素があります。

「生成された電気エネルギー」と「ガソリンの燃焼によって得られたエネルギー」は地球温暖化を招く直接的な原因であり、「電化製品を使うこと」「自動車などを使って移動すること」は、地球温暖化の間接的な原因を示しています。

具体例を並列させる場合は、直接的原因同士を示すか、間接的原因同士を示すなどの規則性を持たせると説得力のある文章になります。

まとめ

伝わる文章を書くためには、言葉選びに十分に気を配る必要があります。頭の中で思いついた言葉に関し、他の言葉がないかどうか調べたり、言葉を並べた後でも、文章を読み直して、わかりやすい順序を再検討してみるひと手間が重要です。