「新聞の作り方」講座 第1回 新聞ができるまで

新聞は、世の中の出来事に関するニュースや論評を伝えるメディア(媒体)です。主に紙媒体ですが、最近はインターネットのニュースも増えています。紙媒体の新聞は、限られたスペースで必要な情報を詰め込んでいます。その編集技術を学ぶことが、学習に役立つことが指摘され、新聞が教育分野にも活用されています。新聞が持つさまざまな特徴と、編集技術を紹介します。

基礎を掴めば、学校新聞・PTA新聞・ミニコミ紙にも応用できる

新聞には、さまざまな種類があります。全国紙や地方紙などの一般紙のほか、経済紙や産業分野別の専門紙、業界紙などがあります。また、政党や労働組合、団体などの機関紙、大学・高等学校・中学校の学校新聞、地域住民向けのミニコミ紙などもあります。新聞休刊日を除き、毎日発行される日刊紙のほか、週刊、月刊、季刊など定期的に発行する新聞もあります。

それぞれ、特徴も作り方も違いますが、ここでは一般紙の作り方をベースに紹介しています。作業の本質は変わりませんので、学校新聞やPTA新聞、ミニコミ紙などにも応用できるはずです。

新聞作りの全体的な流れはこうです。

1
編集会議
どのような新聞を作るか話し合う
2
現場取材
見たこと聞いたことをメモする
3
取材終了後確認作業
事前の予想と違った場合は変更も
4
執筆作業
どんなタイプの原稿にするか、また、文字数を意識して
5
仮見出し
自分が言いたかったことを伝える
6
レイアウト
インパクトで勝負
7
校閲
間違いがないか入念にチェック

それでは流れに沿って詳しく見ていきましょう。

編集会議「どのような新聞を作るかを話し合おう」

新聞を作るには、まず編集会議を開きます。どのような出来事、人物を取材して、どれくらいの分量の記事を書くのかなどの方向性を決めます。その日の新聞のページ数、スペースを把握して、1面のトップ記事にはどの出来事、人物の取材記事を配置するのかについての大まかなレイアウトについても検討を付けます。

実際に取材をしてみて、ニュースバリュー(記事としての価値)が変わることもあるので、面白い記事が出てきたら、後でトップ記事を入れ替えることもあります。みんなで話し合うことが基本ですが、忙しくて集まれない場合は編集長が決めたものを伝えるだけの場合もあります。

現場取材「見たこと、聞いたことをメモする」

どのような取材を担当するかが決まったら、その出来事が起こっている場所を訪ね、実際に起こっている出来事を見たり、その出来事に出くわした人の話を聞くなどの取材活動をします。また、キーパーソンに会って、インタビューします。取材した様子は、紙にメモを取ったり、録音・録画するなどして、記事を書く時の資料にします。

また、現場の象徴的な場面や、インタビューした人物の写真を撮影します。撮影は、突然カメラのシャッターを切るのではなく、事前に許可を求めるのが礼儀です。取材に協力してもらった場合は、コメントを掲載する際に実名を出してもいいかどうかを確認します。

取材終了後の確認作業「事前の予想と違った場合は変更も」

取材が終わったら、それぞれの記者が取材した内容を整理し、トップ記事、二番手の記事などが、想定内だったのかどうかを確認します。実際に取材して、最初に想定していた内容と大きく違っていた場合、記事のニュースバリューの順番を入れ替えたり、追加の取材を行う必要がある場合もあります。

執筆作業「どんなタイプの原稿にするか、また、文字数を意識して」

いよいよ、記事を書く作業です。記事のタイプにはさまざまあります。「いつ(When)」、「どこで(Where)」、「誰が(Who)」、「何を(What)」、「なぜ(Why)」、「どのように(How)」などの「5W1H」の要素を書いていく記録型タイプの原稿と、「なぜそのような出来事が起こったのか」や、「どのようにすればよいのか」など、背景や理由を分析する解説型タイプの原稿などがあります。

人物のインタビュー記事も、質問とそれに対する答えで綴っていく一問一答タイプの原稿と、インタビューした人物が語る談話形式の原稿、人物が語った言葉を盛り込みながら伝えたい事柄を表現するタイプの原稿などがあります。

仮見出し「自分が言いたかったことを伝える」

原稿が書きあがった後は、仮見出しを考えます。仮見出しとは、見出しを付ける人(整理記者)が、原稿を書いた記者が何を伝えたいのかを理解しやすいようにするためのもので、原稿の先頭に付けます。

原稿を書く人と、見出しを付ける人が同じ場合は、仮見出しがそのまま見出しになることもあります。原稿を書き出す前に、仮見出しを考えるほうが、原稿がまとまりやすくなります。

レイアウト「インパクトで勝負」

原稿が書きあがったら、紙面のレイアウト(割付)を考えます。一般紙の新聞の1面には、題字(新聞の名前)があり、下段に広告が入っているものがあります。紙面として使えるのは、題字と広告を除いた部分です。

縦10文字から12文字程度の高さを1段とした「正段」で構成されていますが、「グリッド」を作って、横文字にしたり、字詰めをかえたりすることもできます。原稿、見出し、写真、図表などの「素材」を組み合わせて、読む人の興味を引き付けるようなレイアウトを考えます。

校閲「間違いがないか入念にチェック」

新聞が出来上がると、仮に印刷して、原稿や見出し、写真に間違いがないか「校閲」します。原稿を書き終えた段階でも、デスク(編集者)や校閲記者の目で字の間違いなどについてチェックが入る場合もあります。

第三者の目で確認してもらうと、自分で気づかなかった間違いや、思い込みによるミスを防ぐことができます。印刷した紙面でのチェックは、原稿を再度チェックすることだけではなく、見出しの誤字脱字、違う写真が入っていないかなども合わせてチェックします。第三者の目による確認は重要ですが、もっとも重要なのは、取材をした本人による確認です。

現場を見て、人物に会って、話を聞いたのは取材記者なので、何度も読み返して、ミスがないか確認することが重要になります。

まとめ

こうして出来上がった新聞が、読者の手元に届けられます。デジタル技術の発達で、新聞作りは便利になりましたが、新聞を作る主役は人間です。見たもの、聞いたこと、感じたことを、伝えたい人に伝える「新聞作りの技術」を学ぶことで、豊かな表現力を身に付けることができるはずです。