「新聞の作り方」講座 第3回 取材の基本は見る、聞く、調べる

新聞作りで、最も大事な作業の一つが、取材です。「このような原稿を書こう」と事前に描いていたプランがあっても、実際に取材をしてみたら、違う事実を発見したり、違った考え方、別の角度からのものの見方ができることもあります。真摯に取材対象と向き合うことは、良い新聞を作るためにはたいへん重要です。

現場取材「5W1Hや印象に残る場面を記録する」

現場取材は、新聞作りの基本です。出来事が起こっている場所に出向き、自分で見て、聞いて、その出来事を記録します。骨格となる記事(本記)を書くために必要な5W1Hを確認し、忘れないようにメモします。

また、その出来事を臨場感ある文章で伝える場面記事、または、その出来事の背景や理由などを伝える解説記事などのサイド記事(本記と合わせて読ませる物語性のある記事)を書けるように、目の前の情景や人々の動き、表情などもメモします。

例えば、学校内では、卒業式や入学式、体育祭などの行事を取材することがあります。行事の日時、場所などのスケジュールはあらかじめ、押さえておきましょう。

さらに、イベントの目玉の場面、校長や生徒代表のあいさつの言葉などもメモしておきます。プログラムや、あいさつの全文などの資料が事前に手に入るなら、携帯しておくと便利です。

現場取材では、写真撮影も行います。イベントの主催者などに、あらかじめ許可を得ておくといいでしょう。その場合、腕章などを受け取り、主催者の指示に従って、許可されている場所で撮影します。

特別に許可を得ることができなかった場合は、イベント開催の迷惑にならないように撮影します。印象に残る場面を撮影できればベターですが、少なくとも1枚は、それ1枚でそのイベントの特徴がわかる全景写真(○○中学校卒業式などの横断幕があるような写真)を押さえておきます。

人物へのインタビュー取材

人物へのインタビューも、新聞作りのためには大切な取材です。インタビュー取材に慣れている人はそう多くありません。インタビューを申し込まれると、何を聞かれるのか、どう答えればいいのか不安になるのが普通です。

インタビュー相手には、「どういう記事を書こうとしているのか」を説明し、あらかじめ、具体的な質問項目を渡しておくと、当日のインタビュー取材がスムーズに進みます。

例えば、A中学校の卒業生で、ユーチューバーとして活躍しているマーベル鈴木さんに「かがやくA中魂」のコーナーに登場してもらうという企画があるとします。その場合、鈴木さんには、アポイントを取る前に取材依頼書を送ります。

取材依頼書のサンプル
マーベル鈴木様

A中学新聞部

拝啓

さて、A中学新聞部では学校新聞を発行しており、卒業生の皆さまのご活躍を紹介する「かがやくA中魂」を連載しています。

つきましては、マーベル鈴木様に〇年秋号の同コーナーにご登場いただきたく、ご連絡を差し上げました。

具体的な質問事項は以下の通りです。ご多忙の中大変恐れ入りますが、何卒ご検討の程よろしくお願い致します。

    1. 中学時代の思い出
    2. ユーチューバーになろうとおもったのはいつか、また、そのきっかけがあれば教えてください
    3. ユーチューバーの仕事でやりがいを感じる時、また、辛いと感じる時はどんな時ですか
    4. 将来の夢について
    5. 在校生にメッセージを

敬具

図書館やインターネットでリサーチする

書こうとしている記事の参考になる本や新聞記事などを探すには、図書館が便利です。さまざまなカテゴリーの本や雑誌などの資料を検索し、図書館内で閲覧したり、場合によっては借りることができます。

図書館内に目当ての本がないときでも、同じ自治体の図書館から取り寄せられるサービスもあります。また、一般紙や経済紙などの新聞は、過去の記事に遡って調べることも可能です。

また、インターネットを使ったリサーチも便利です。中央省庁や地方自治体、業界団体、各企業などのホームページを探すと、さまざまな領域のデータや調査結果、会議記録などを活用することができます。

記者と言えば、現場取材やインタビュー取材が花形の仕事のように見えますが、実際はリサーチする力も重要です。知りたいことがあるたびに、面倒くさがらずに調べる癖をつけておくと、いざというときに、どういった情報がどこを探せば見つかるのかがわかるようになります。

こうした調査力は、記者だけでなく、さまざまな分野で役に立ちます。

まとめ

取材力を付けるコツは、面倒くさがらないことです。面倒くさがらずに、現場に行って自分の目で確かめる、面倒くさがらずに人に聞く、面倒くさがらずに自分で調べる、ということを地道に繰り返すことが大事です。

今はインターネットが発達し、現場に行かなくても、自分の目で見なくても、さまざまなことが分かります。しかし、ネットで調べた知識と、自分で実際に体験してみるのとでは、大きく違っている場合もあります。面倒くさがらずに、現場に行く余裕があるなら、足を運ぶことをお勧めします。

一方で、インターネットが発達したおかげで、今まではお金や時間をかけなければ行けなかった場所のことを、手軽に知ることができるようになりました。「遠い場所の出来事だから、わからなくてもいいや」とあきらめてしまうのではなく、インターネットで調べるという習慣をつけることが大事です。

ただ、インターネットにはさまざまな情報があふれていて、中には不正確な情報もあります。信頼できる情報なのかを見極める力も重要です。

インタビュー取材でも、これまでは対面でしかできませんでしたが、最近はオンラインによるインタビュー取材も主流です。電話取材と違って、相手の表情や資料を使いながらの説明なども容易にできます。面倒くさがらずに、まずはトライしましょう。